四十肩・五十肩四十肩や五十肩のお客様がいらっしゃると、切ない気分になることはないでしょうか?

本来、体は自分で回復できるようにできています。ケガをして出血した時、本人が治そうと意識しなくても自然治癒力が働き回復していきます。カットバンを貼り保護すれば、さらに回復は早まります。

例えるなら、施術家の仕事はこのカットバンを貼ることと言えます。

しかし、四十肩・五十肩は自然治癒力の範囲を超えて悪化した状態です。そのため、お客様が自力で肩や腕を十分に動かすことができません。

四十肩・五十肩の場合、施術者の仕事はカットバンを貼ることではありません。お客様が自然治癒力を発揮できない原因を見つけて、その原因を除去することが仕事です。

ですから、施術者として、お客様が治っていくために最善を尽くす覚悟があっても、四十肩・五十肩の治癒には回数がかかるものです。

しかし、お客様の中には痛み止めの注射でもするかのように、「すぐに治ることを期待している」方がいらっしゃいます。「何回で治りますか?」「あと何回来ればいいですか?」と聞かれても、ある程度良くならないうちは、見通しすら伝えられないことがあります。

そこで、四十肩・五十肩の方がいらした時には以下のことを参考にして、診断の役に立ててください。

四十肩・五十肩の問診

四十肩・五十肩のお客様は、多くの場合慢性的な肩こりを抱えています。その慢性的な肩こりが、更年期ごろに四十肩・五十肩の症状として現れてきます。過去の肩こり歴を知る意味で、初回問診は大切になります。

初回問診で必要なこと

初回の問診では、四十肩・五十肩に至った肩こりや他の既往症も含め、丁寧な問診をすることが大切です。細やかな問診によって、怪我や事故など過去の意外な原因を見逃さずにすむためです。

では、丁寧な問診は具体的にどのようにすればよいかを説明します。

5W1Hの6つを意識して問診する

初診時の問診は、どの症状でも毎回緊張するものです。しかし、四十肩・五十肩も他の症状と同じように「5W1H」の6つについてしっかりお聞きすることが大切です。

5W1Hとは以下の6つの質問です。

①なぜ 五十肩になったのか?(Why)
②誰が (Who)
③どこが辛いのか (Where)
④いつ辛いのか (When)
⑤何をしたら痛いのか (What)
⑥どのように (How)

 

この6つのうち⑥ の、「どのように(How )」という質問を投げかければ、お客様が「どのように痛いのか」を色々話してくださいます。臨床経験が豊富になると、お客様の話の中に診断のヒントはたくさん隠れています。そこで、どのように痛いか話してくれるお客様に、①〜⑤の質問をして深掘りしていくことで、施術のヒントやポイントが見つかります。

四十肩・五十肩の問診でよくある失敗

「四十肩」「五十肩」の方が来院した場合、経験が浅い施術者のプレッシャーは相当に大きなものです。慣れない施術者は、内心では「改善できるだろうか」と不安で、つい慌ててしまいます。慌てて丁寧な問診を怠ると、十分な仮説を立てることができません。

特に、開業3年くらいまでの整体師さんの多くは経験が浅いこともあり、自分の施術に自信がありません。そのため、自分の動揺をお客様に気づかれまいと、無意識に慌ててしまうのです。

そのような時、よくある失敗は次のようなものです。

施術者:どうされましたか?
お客様:五十肩で、とても痛みます。
施術者:そうなのですね。どこが痛みますか?
お客様:はい、肩先のここがズキズキ痛みます。
施術者:わかりました。五十肩は辛いですよね。では、施術ベッドへどうぞ。
お客様:はい、・・・

私も、40代後半のある朝、起きたら「五十肩」になっていました。

「いつか治るだろう」と、たかをくくっていたところ、症状は日増しに悪化していきました。これは「他の施術者の施術を受けられるチャンス」と考え、近隣の複数の整体院に通いました。しかし、私はこのとき、どこの施術者からも詳しい問診を受けることはありませんでした。

何度か整体院に通ったあと、私は「まだ、ここが辛いのですが…」と恐る恐る訴えたことがあります。しかし、施術者は困惑した表情で、時間を延長しても同じ手法を繰り返すばかりでした。90分もうつ伏せの状態でいたので、顔はむくみ首まで痛み出し残念に感じたものです。

せっかく患者側として情報を提供したのに、「なぜ、もっと突っ込んで原因を究明してくれないのだろうか」と不思議に思ったものでした。

そこで以下に、四十肩・五十肩のお客様が訴える会話を中心に、診断のヒントになることをまとめました。四十肩・五十肩の原因がどこにあるかを、ある程度特定できるように紹介しています。実際にお客様の話を聞く際の参考にしてください。

四十肩・五十肩の原因は何かを探る

四十肩・五十肩は、はっきり原因がないままいつのまにか痛くなることが多いです。そのため、痛みの原因を聞いてもわからないことがよくあります。

このような時は、あえて「原因に心当たりはありますか?」と聞いてみましょう。お客様に心当たりがあれば、色々思い出して話してくれます。心当たりがなくても質問することで、後日思い出すこともあります。

例えば

・「パソコン業務を集中して行ってから痛みが増した気がします」
・「緑内障の手術後、退院までの1週間ずっと背中を丸めて下を向いていました」
・「交通事故後、しばらくしてからのような気がします」
・「若い頃スキーで転び、ストックを持っていた手が後ろに持って行かれたことがあります」
・「転倒した時に、手をついて自分の体重を受け止めたことがあります」

 

など、原因のヒントになることを話してくださることがあるので、必ず確認してください。その際は、さらに

・「どの角度でトラブルが発生したのですか」
・「どの方向に引きずられたのか覚えていますか」
・「腕を、不自然な方向にひねりませんでしたか」
・「その時、医療機関で診断を受けましたか」
・「医師からは、何と言われましたか」

などと、必ず追加確認しましょう。思わぬ原因が隠れていることがあります。

四十肩・五十肩で問診の会話からわかること

さっそく、お客様の具体的な訴えをみていきましょう。

動かすと痛む【動作時痛】を訴えた場合

動作時痛の場合、「肩甲上腕関節」が痛いのか?「肩甲胸郭関節」が痛いのか?それとも「両方」が痛いのか?を、探る必要があります。

肩甲上腕関節(=肩関節)の患部を特定する

お客様が腕を回す動作をしながら痛みを訴えたら、「そうですか。その動きのときにどこが特に痛みますか?手か指で痛むところを教えてください」と、質問しましょう。

すると、お客様が手を当てて、「ここが痛いです」「ここまでは痛くないけれど、これ以上上げようとすると痛いです」などと、可動の範囲まで教えてくれます。この段階である程度、肩甲上腕関節(=肩関節)の可動制限が関節の前後左右、どの辺にあるかを判断できます。

肩甲上腕関節(=肩関節)の動きは「屈曲・伸展」「内転・外転」「上・下方回旋」の6方向

肩甲上腕関節(肩関節)は、体の中でも一番大きく動く球関節です。球関節とは「丸いお椀のような受け口」に「ボールのような丸い骨頭」がはまって、クルクルと動く関節のことです。肩甲上腕関節(肩関節)は、まさしく球関節のため色々な方向に動くのが正常です。

正常な肩の可動域は本によって少し違うため、参考程度に以下のイラストはご覧ください。

五十肩で痛いときの診断f

例えば、「シートベルトをつかむ時に痛みます」とお客様が訴えたら、「伸展・外転・外旋」に運動制限があると判断できます。「洗濯物が干せないです」と訴えたら「屈曲」運動制限があります。「Tシャツを脱ぐときに痛みます」と訴えたら「屈曲・水平内旋・外転」に運動制限があるのではないかと予想できます。

このように、お客様が日常生活の不便なことを説明してくれます。こうして、どの方向に腕が動かないかがわかると施術部位を想定できます。

問診が終わったら、施術前の検査では以下の6つについて確認すると、さらに的確な施術ができます。

1、前方挙上に運動制限があるとき:肩鎖関節で鎖骨端が後方に動けないことが原因
2、後方挙上に運動制限があるとき:肩鎖関節で鎖骨端が前方に動けないことが原因
3、上方回旋に運動制限があるとき:肩峰と上腕骨の間隔が狭くなり動きが制限されていることが原因=棘上筋の停止部が窮屈になっている。または棘上筋停止部の癒着がある
4、下方回旋に運動制限があるとき:胸鎖関節の可動制限がある、上腕三頭筋長頭の起始部の癒着が原因
5、内旋方向に運動制限があるとき:肩甲下筋がうまく使えない。肩甲下筋の停止部の癒着が原因
6、外旋方向に運動制限があるとき:棘上筋・棘下筋・小円筋のいずれか、または複数の筋肉停止部に癒着があることが原因

このように、6つの可動域制限を確認することで、肩甲上腕関節の患部を特定することができます。

肩甲胸郭関節の患部を特定する

肩甲胸郭関節が動かないお客様は、自分の手で患側の肩甲骨上縁や内側縁に触れて、「ここが痛いのです」と訴えることが多いです。なぜそのようなことになるかを説明します。

肩甲胸郭関節の動きは「上下・左右」「上方内旋・下方回旋」の6方向

胸郭の上に乗っているだけの肩甲骨は、天使の羽のように大きく動くのが正常です。しかし、五十肩になると肩甲骨の動きは制限されます。そして、肩甲骨はまるで胸郭にぺたりと張り付いたかのように動かなくなります。

肩甲骨の動きが悪くなると、肩甲骨周囲の筋肉が動かない肩甲骨をサポートします。すると、肩甲骨周囲の筋疲労が常態化して、こわばりや痛みがきつくなります。そのため、痛む場所に手を当てて「ここが苦しいです」「痛いです」と訴えるのです。

その時は、痛みを訴えるお客様の後ろに立って、実際に軽く動かしてもらいましょう。痛い部位にお客様の手を当ててもらい肩甲骨の動きを観察します。すると、肩甲骨がどの方向に動かないかがわかります。

正常な肩甲骨の可動方向は、以下の通りです。肩甲骨の中央(鍼灸の「天宗(てんそう)」のツボ」が動きの中心です。肩甲骨は、常にその中心を軸にして「上・下」「左・右」「上方内旋・下方回旋」と動きます。

五十肩の診断 肩甲骨の動き

※ ここで、肩甲骨の動きが悪い時は、施術前の検査を正確に行う必要があります。施術前の検査については別途説明しますので、ここでは簡単に述べておきます。

検査は仰臥位で行います。術者は肩甲骨全体をあちこちから把持します。そして、動きの軸を常に通りながら上記6つの方向に動かしてみます。すると、動かない方向が明確になります。

このように、肩甲骨を6方向に動かしてみると、肩甲胸郭関節の患部を特定できます。

痛む範囲から神経を特定する

問診でどの神経が痛みを発しているのか、明確にできることがあります。

「痛みます」というお客様に、「痛みはどこにありますか」「どの辺りまで広がっていますか」「それは痛みですか、それとも違和感や痺れですか」と聞いてみましょう。お客様に手で示してもらいながら詳しく聞くと、どの神経に無理がかかっているかがわかります。

五十肩の時 痛みが出る場所

例えば、肩の上から三角筋の中部線維に手を当てて「ここが痛みます」と言った場合は、腋窩神経(第5−6頸髄神経)の疑いがあります。

脇の下の後ろ側で、肩甲骨の外側縁に手を当てて「ここが痛みます」と言ったら、肩甲上神経(第4−6頸髄神経)の疑いがあります。またここは、肩鎖関節が動いていないときにも痛みが出ます。

上腕骨骨頭近くの前側に手を当てて「ここが痛みます」と言ったら、「一番痛いのはどこか指1本で示すことができますか?」と聞いてみましょう。

なぜなら、この部位には、深い方から順に①肩甲下筋②広背筋・大円筋③大胸筋④三角筋前方線維の4つの筋肉が付着しています。そのため、この中のどの筋肉が痛むのかを探りたいからです。これら4つのうち、どの筋肉が痛みを感じているのかを特定したら、筋肉の神経支配を調べてください。

神経が何番目の頸髄神経かがわかれば、施術ポイントが見つかります。

ちなみに、四十肩・五十肩の症状は【痛み < 違和感 < 鈍痛 < しびれ】の順に時間が経過していることを示しています。四十肩・五十肩でしびれていたら、発症後時間が経っているため回復には時間が必要です。

このような場合、施術者は困難との戦いになると覚悟しましょう。

※信頼関係が築けていないお客様の場合、時間がかかることを説明するのは施術前にしましょう。施術後に説明を行うと、お客様には「言い訳にしか聞こえない」ことが多々あります。お客様が問診の段階で「鈍痛」「しびれ」を訴えたら、その時点ですぐに「お客様は重症なタイプなので、治療回数が多く必要です」と、理由とともに伝えましょう。

このように、お客様が痛む筋肉の支配神経を見つけることで患部を特定できます。

お客様が手を当てる位置で、痛む筋肉を特定する

多くの四十肩・五十肩では、「腱板」「上腕二頭筋長頭」「上腕三頭筋長頭」のどれかもしくは複数が正しい位置より短くなったり、骨に筋膜(腱)が癒着したりしています。

すると、お客様は症状を訴える時に、痛む部位に手を当てて「このあたりに痛みがあり、窮屈で動かないのです」「この奥がジンジンしています」「この辺がつるように感じます」などと表現します。

それぞれ見ていきましょう。

1、「腱板」

「肩先に痛みがあり、窮屈で動かないのです」と「腱板」に手を当てたら、「腱板回旋障害」(四十肩・五十肩の別名)の可能性があります。

「腱板」は、英語ではローテーターカフと言います。ここで「腱板」について説明します。

四十肩・五十肩 腱板
四十肩・五十肩 腱板

「腱板」は「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉が上腕骨頭に停止する部位です。これら4つの筋は、カフスのように肩の付け根をくるりと取り囲んでいるので、ローテーターカフの名がついています。

イラストを参考にしながら、まずは自分の肩を触って、どこに「腱板」がついているのか確認しておいてください。すると、お客様が患部に手を当てて痛みを訴えた時に、どの筋肉の問題かを特定できます。

以下を参考に、仮説を立ててください。

棘上筋が原因の時:肩のてっぺん、もしくは上腕骨のトップ(肩峰のすぐ脇)に手を当てて痛みを訴える
棘下筋が原因の時:棘上筋より少し後ろに手を当てる、あるいは肩甲骨背面全体に手を当てて痛みを訴える
小円筋が原因の時:脇の下の肩甲骨外側縁の付け根に手を当てて痛みを訴える
肩甲下筋が原因の時:結節間溝の前側の小結節稜(三角筋前部の深部で大胸筋の停止部の上)に手を当てて痛みを訴える

 

2、「上腕二頭筋長頭」

上腕二頭筋は長頭と短頭がありますが、特に問題になるのは長頭腱です。お客様は、正確に長頭腱の場所を指し示して「痛みます」と訴えます。なぜなら、長頭腱は結節間溝という凹みに収まって走り肩関節包の中に入り込み、肩甲骨関節窩の上端についているからです。

四十肩・五十肩 上腕二頭筋

イラストを見て長頭腱の走行を理解し、自分の腕で上腕骨結節間溝を走る上腕二頭筋長頭を触って確認しておきましょう。この部分に問題が起きていると、お客様が触る部位を見ればすぐにわかります。

3、「上腕三頭筋長頭」

上腕三頭筋は3つの頭(長頭、内側頭、外側頭)を持つ筋肉です。その中でも長頭腱が特に診断で大切です。なぜなら、長頭腱は肩甲骨関節窩の下縁に、3センチくらいの幅で広く帯状に付着しているため、この腱が伸びないと腕が上がらないからです。

四十肩・五十肩 上腕三頭筋

長頭腱が伸びず手が上がらない場合、この長頭腱が癒着して硬くなっている可能性があります。このような場合、お客様は脇の下を触って、「ここが伸びないです」「詰まっている感じがします」などと訴えます。

以上、「腱板」「上腕二頭筋長頭」「上腕三頭筋長頭」のどれが癒着して硬くなっているか、または複合で起こっているかを判断し、メモしておき、施術組み立てのヒントにします。

夜間にズーンと痛む【静止時痛】を訴えた場合

肩甲上腕関節(肩関節)を動かしていないのに、肩や腕の付け根が痛い場合があります。

お客様の多くは、「ズックンズックンうずきます」「ジジーンと痛くなってきます」「重だるく痛みます」などと表現します。このようなときは、前述した【痛み < 違和感 < 鈍痛 < しびれ】の「鈍痛」が現れていると判断してください。

こうした、鈍痛の症状がある場合も治癒には時間がかかります。そのため、お客様に施術回数が多くなることを「鈍痛は発症後時間が経過した症状である」という理由とともに、説明する必要があります。

このような鈍痛があるときは、関節を覆う関節包が拘縮して関節が窮屈になっているのです。そのため、肩を動かしていないのに痛かったりうずいたりします。

例えば、夜中に肩の痛みで目が覚めてしまう場合です。四十肩・五十肩の場合、肩が前方向に巻いています。そのため、仰向けに寝るのは苦しいので、横向きに寝る方が多いです。

しかし、四十肩・五十肩で横向きに寝ると、自分の体重がドスンと肩関節にかかります。すると、痛めている肩甲上腕関節(肩関節)を自重で圧迫することになります。

健康体なら、横向きに寝た段階で無意識に肩甲骨をずらして、肩甲上腕関節(肩関節)に無理が来ない位置に腕を移動させています。しかし、四十肩・五十肩で、無意識の微調整ができません。そのため、「夜の肩の痛み」となって静止時痛が現れるのです。

もし、お客様が静止時痛を訴えた場合は、「どのような姿勢の時に痛いのか」「どこが痛くなるか」を聞きメモをして施術の仮説を立てるヒントにしましょう。そして、治癒には時間がかかるタイプの四十肩・五十肩であることを、術前にお客様に説明してください。

該当部位を施術するときは、お客様が理解できるように話しかけましょう。例えば、「ここが夜間痛の原因になっている場所ですよ」「ご自分では、夜間痛をこの辺りで感じているのではないですか」などと話しかけます。

このようにして、お客様が「なるほど」と納得できるように、何をすべきかを考えておきましょう。

痛む時間帯を確認する

肩甲上腕関節(肩関節)が、いつ痛むのかも診断の目安になります。夜寝ているときに痛むのは、重症で時間が経過している症状だと説明しました。

お客様が「午前3時から5時頃に決まって痛みで目が覚めます」と訴えたら体の冷えが原因です。この時間は、1日の中で一番気温が下がる時間帯のため、血流が悪くなり体が冷えて痛みを感じるのです。

その場合は「肩のどの辺りが痛みますか」と確認してください。確認したら、その部位を通る血管を解剖書で確認しましょう。すると、その血管が通過するどこかに、肩甲上腕関節(肩関節)の動きの制限があることが想像できます。

日中、冷房の中にいると健側は何事もないのに患側が痛いときも同様です。このような時は血行不良になっているので、患部を温めたほうがいいです。また、エアコンから直接冷風が吹き付けるところを避けるようにすると、痛みが楽になることがあります。

夜間痛がある場合は、普段の生活環境を確認し、血行不良の原因がないか探りましょう。

痛み方で判断する

痛み方の表現には個人差があります。

・シートベルトをとろうとすると「ヒッ」と痛い
・服の袖に手を通せない
・ブラジャーを後ろでつけられない
・就寝中に「ズキンズキン」とする
・腕を垂らしたままだと「ジーン」と痛い

などなど、表現はいろいろあります。

「ヒッと痛い」ときは、肩鎖関節や肩甲上腕関節(肩関節)で動きの制限があることが多いです。

「ズキンズキン」や「ジーンと痛い」ときは、関節包の癒着や拘縮があります。

「ヒッ」「ズキンズキン」「ジーン」という痛みの訴えがある時は、関節の位置が微妙にずれているというサインなので、パーフェクト整体の適応症です。

このような痛みがある時は、お客様はとても辛い状況です。

施術者は表面の筋肉をほぐすだけでなく、関節包をリラックスさせて、関節の正常な動きをつける必要があります。施術者が痛みの原因としっかり向き合い、改善させる必要がある症状です。

痛みやしびれの範囲で判断する

痛みやしびれの範囲がわかると、原因部位を特定できることがあります。

四十肩・五十肩 痛み しびれ

上のようなイラストをよく目にすると思います。

これは、肩から腕に行く神経の分布図です。このイラストを見て、痛みやしびれを訴えるお客様の患部がどこにあるかを確認しましょう。

そのときは、口で言ってもらうだけでなく、お客様自身の手で「この辺りが痛いです」と患部を伝えてもらいましょう。

そして、上のイラストと見比べれば、どの神経に問題があるのかがわかります。それは、神経の出口かもしれません。また、神経の走行途中のどこかに筋膜の癒着があったり、関節の動きの制限があったりして、神経の走行が窮屈になると、そこが痛みやしびれの原因になっていることがあります。

例えば、お客様が「指までしびれています」と訴えた場合「そうですか」の一言で済ましてはいけません。 「どの指が痺れているのですか」とさらに聞いてみましょう。

同じ「しびれ」でも、親指のしびれと、小指のしびれでは支配神経が違います。そのため、痛みやしびれの範囲がどこなのかを特定できる形で質問してください。

このように、痛みやしびれの範囲を詳しく聞くと、施術する際の仮説が立てやすくなります。

腱板断裂・上腕二頭筋長頭腱炎の可能性を考える

腱板断裂・上腕二頭筋長頭腱炎のケースは滅多にありませんが、たまに該当する方がいます。腱板断裂・上腕二頭筋長頭腱炎は、共に整体の不適応症です。すぐに医療機関で検査してもらうように勧める必要があります。

これらは不適応症ですので、見分け方を知り診断にいかしましょう。

腱板断裂とは

腱板とは「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉だと前述しました。

四十肩・五十肩 腱板
腱板は、肩峰と上腕骨骨頭に挟まれています。狭い隙間の間で動いているため、肩の使いすぎで断裂が起こることがあります。腱板の老化で断裂することもあるので、腱板断裂は中高年以降に起こることが多いと言われています。

例えば、野球のピッチャーが投球練習を過度にして腱板断裂になったときは、医療機関で検査を受けます。しかし、普通の生活をしていて老化が原因で腱板断裂になったときは、四十肩・五十肩と思い込み、断裂に気づかないことがあります。

断裂がひどければ手術が必要なこともあるため、通常の施術で効果がない場合は、少しでも早く医療機関の受診をすすめましょう。

【腱板断裂と四十肩・五十肩の見分け方】

腱板断裂と四十肩・五十肩を見分けるには3つのポイントがあります。

1、関節の動きに制限がない
(四十肩・五十肩は動きに制限があります。しかし、腱板断裂の時は肩がぐるりと動くことが多いです。そのため、軽い四十肩・五十肩だと、勝手にお客様が自己診断してしまうことがあります)
2、挙上の途中に肩峰の下で、ジョリジョリゴリゴリと、きしむような音がする
3、腱板断裂の時は夜間痛が多い

 

「夜間に、痛みで目が覚めます」とお客様が訴える時は要注意です。

四十肩・五十肩で夜間目が醒める時は、肩関節の動きが制限され、肩周囲の筋肉が硬くなっています。

それに比べて、腱板断裂は、肩関節がぐるりと動き筋肉があまり硬くなっていないことが多いです。加えて、腱板(特に棘下筋)の断裂により、患部の繊維が萎縮していることが多くあります。そのため、初回からお客様がどこに手を当てて痛みを訴えるかを、しっかり目視確認しておきましょう。

腱板断裂が疑わしいときは、「医療機関で診てもらいましたか」と確認してください。まだ診察をしていない時は、「念のため一度医療機関をお尋ねになるといいですよ」と伝えてください。

上腕二頭筋長頭腱炎の可能性を考える

四十肩・五十肩 上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋長頭腱は、上腕骨の結節間溝という凹みを通過して、肩甲骨「関節窩の上端」についています。この長頭腱が結節間溝の前や後ろに少しずれてしまい、腕を動かす度に骨に当たることで起こす炎症を「上腕二頭筋長頭腱炎」と言います。

この炎症は、農家の仕事で剪定(せんてい)や摘果(てきか)などを継続して行ったり、野球でボールをたくさん投げ込んだりした時に起こしやすいです。

上腕二頭筋長頭腱炎も夜間痛があり、寝返りを打って腕が動くときにとても強い痛みを感じます。そのため、四十肩・五十肩と思いがちです。

【四十肩・五十肩と上腕二頭筋長頭腱炎の見分け方】

四十肩・五十肩と上腕二頭筋腱炎を見分けるには次の2つがヒントになります。

1、挙上の初動動作ができない
2、入浴後にズキンズキンとうずく

挙上の途中からきつくなるのが四十肩・五十肩です。一方、上腕二頭筋長頭腱炎の場合は、挙上するための初動ができません。仰向けで寝たところから最初の30度くらいが動かせません。最初の30度を介助してもらえば腕は上まで上がります。

そこで、初回問診時に「脱力して腕を下げた位置から、どこまで手を挙げられますか?痛くない範囲でゆっくり動かしてください」とお願いしましょう。自力で腕を挙上しようとして初動ができない時は、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性を疑ってください。

このとき、お客様は上半身全体を使って、腕をなんとか持ち上げようとします。これも、上腕二頭筋長頭腱炎と四十肩・五十肩の違いを見分けるポイントです。

また、四十肩・五十肩は入浴すると楽になりますが、上腕二頭筋長頭腱炎は炎症があるので入浴後にズキンズキンと痛くなります。このような痛みがある場合は、医療機関でしっかり検査してもらうことをお勧めしてください。

私が今まで診た方で、いつのまにか結節間溝からはみ出た上腕二頭筋長頭腱の繊維が1本・2本と切れていき、切れた側の腕全体が細くなっている方がいました。「医者に行く時間がない」と言って、痛み止めを飲んでごまかしていたようです。

私のところにいらした時は、腕を垂らしたまま、自力では全く腕を上げられませんでした。それでも農家の仕事をやめず、動かない右腕を左腕で持ち上げて仕事をしていました。

無理をしているため、上腕二頭筋長頭腱の繊維がだんだんと切れていきました。さらに痛みもひどく、筋力がどんどん落ちていっているご様子でした。至急、医師の検査を受けるようにお願いし、炎症が取れてから、来ていただくことにしました。

その後、結節間溝で上腕二頭筋長頭腱が動けるように施術すると、炎症が起きた側の腕も使えるようになりました。しかし、切れてしまった上腕二頭筋長頭腱の繊維がくっつくことはありません。

動きが回復しても、繊維が切れて細くなったぶん上腕二頭筋の筋力は落ちていました。しかしながら、普段の仕事を普通にこなせるまでに改善しました。

上腕二頭筋長頭腱炎を四十肩・五十肩と勘違いしないようにしましょう。そして、医療機関をお勧めしたほうがいいタイプを、見分けられるようにしておいてください。

骨棘がある場合

「医療機関のレントゲン検査で、「骨棘(こつきょく)」ができていると言われました」と、お客様が話すことがあります。

施術者は骨の棘(とげ)と聞き「ギクッ」とするかもしれません。骨棘とは、肩の骨の周り(靭帯など)にカルシウム沈着が起こった状態です。四十肩・五十肩で肩関節の動きが制限され、自由に動けなくなった靭帯を補強するために骨周囲にカルシウムが沈着するのです。

カルシウムはレントゲン検査で白く映るので、まるで棘(とげ)が生えたように見えます。しかし、心配はいりません。「どこに骨棘が出ていると言われましたか?」と聞いてみましょう。お客様は指で示しながら患部を教えてくれますので、そこが動かない靭帯や腱です。

パーフェクト整体で肩甲胸郭関節と肩関節の可動域が復活して、腕をクルクル動かすことができると、「骨棘」はなくなります。どのような手技でも同様ですが、肩甲胸郭関節と肩関節が正常に動かせるようになれば、カルシウムは血中に吸収されて「骨棘」がなくなるからです。

そのため、「骨棘」があると聞いただけでビクビクする必要はありません。ただ、痛みがあるとき時は、お客様はとても辛いので、検査や施術は慎重に丁寧に行ってください。

まとめ

以上のように、様々な角度から問診すると、必要な検査や施術の仮説が立てやすくなります。

痛みは、「静止時痛なのか動作時痛なのか?」「動作時痛なら、前後左右回旋どの方向にどのくらい動かないのか」を確認しましょう。

痛みや痺れの範囲を確認すると頸髄神経の何番目にトラブルがあるかを推定できます。

腕がだらりとして健側の腕でサポートしないと患側の腕が挙上できないときは、上腕二頭筋長頭腱の繊維が切れていることもあると頭の片隅に置いておきましょう。

四十肩・五十肩のほとんどのケースは、医師の検査を受けてから整体院に来ます。もし、医師の診断を受けていない方で回復が遅い時は、一度医療機関での検査をお薦めしてください。

このように、様々な角度から問診して、まずはあなたが検査・施術するときの仮説を立ててください。

仮説が当たっていれば、四十肩・五十肩の辛さは必要以上に長引くことなく、お客様の症状解決に必要な最短期間で改善することができるようになります。

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