あなたの院に、足を引きずるお客様がいらしたとき、どのように対応されるでしょうか?

足を引きずる時の【診断法】

先日、塾生の紹介でいらした、足を引きずるお客様がいます。お客様は「足の引きずりが、だんだんひどくなってよくつまずく」「心配で複数の大病院で検査した。脳神経の専門医の検査も受けたけれど原因が全くわからない。なんとかならないか」とのことでした。

足を引きずる原因はさまざまあります。過去の施術経験で改善例を持っている先生も多いと思います。しかし、油断大敵です。このお客様は幸い複数の大病院で検査をしていたため、医師の診断を勧めることはしませんでした。ただし「定期的に医師の検診は受けてくださいね」と、念押しはしっかりしました。

あなたは、医師の診断で原因不明だと聞くと少し不安になるかもしれません。しかし、施術対象なのかを見極めるには、やはり原因特定が大切です。

ここから、原因見極めのヒントになるよう、あなたの院に足を引きずるお客様がいらしたときの原因と診断をお伝えします。

足を引きずるお客様の【診断・対策】

問診で原因を探る

来院されたお客様に、初回質問は5W1Hの6つを使って話を伺うのが基本です。

①なぜ 足を引きずるのか?(Why)
②誰が (Who)
③どこで (Where)
④いつ (When)
⑤何をして (What)
⑥どのように (How)

この6つのうち、原因を探すには5Wを聞いて探っていく必要があります。

①なぜ足を引きずるのか?(Why) ②誰が (Who) ③どこで (Where) ④いつ (When) ⑤何をして (What) の5つです。

慣れないうちは、「ただ、聞けばいい」と順を追ってマニュアル通り軽く流すように聞いてしまいます。しかし、今後の施術の行方がかかっています。そのため、ここは慎重に「もしかしたら何かの病気が隠れているかもしれない」という視点で聞いていきましょう。

例えば、慣れないとついしてしまうのは、このようなことです。(><;

施術者:何(What)をしたのですか?
お客様:はい、自転車で転んだのです。
施術者:そうなのですね。自転車で転んでから足を引きずるようになったのですね。
お客様:はい

ここで質問⑤のWhatの質問を終えてしまうと、ほとんど何も情報は得ることができません。そこで、次のように質問を継続する必要があります。

施術者:どの角度で転んだのですか?
お客様:はい、右側に倒れました。
施術者:その時、どの辺をどのような角度で打ったのですか?
お客様:はい、・・・・
施術者:その後、レントゲンをとって検査はしてもらいましたか?
お客様:はい、すぐに・・・・
施術者:レントゲンの結果について、医師から何と言われましたか?
お客様:はい、・・・
施術者:それで、どのような治療をしたのですか?
お客様:はい、・・・

と、詳しく聞いてください。

すると、過去の状況がだんだん見えてきます。お客様に、どのような角度で、どの方向から、体のどこに無理がかかったのかがわかります。医師の診断と、もしあればレントゲンの結果、そしてその後に受けた治療法などを聞けば、状況を把握するヒントがたくさんあります。なんとなく流して聞かずに、問診だけで仮説が立てられるくらい、しっかり聞きましょう。

特に、開業して3~5年くらいだと、施術に自信が持てないことがあります。そのような時は、つい表面的にさらっと聞いてしまいがちです。そのような時こそ、腰を落ち着けて隠れた原因がないか探りましょう。その時はわからなくても、経験を積むうちに必ずわかるようになります。

<h4足を引きずる原因は大きく3つに分類されます。

1、病気
2、事故や怪我
3、加齢

病気が原因の場合

足を引きずる原因が、もし何かの病気やその兆候なら、少しでも早く医師の診断を仰ぐ必要があります。以下は、病気が原因の場合です。

痛風で、痛みがきつく普通に歩けない。
糖尿病の合併症で、気づかぬうちに神経障害が起こり足を引きずる。
・腰の椎間板ヘルニアで、足に行く神経が圧迫されうまく筋肉がコントロールできない。
脳梗塞の後遺症のため、足が上がりにくくて引きずってしまう。

などが代表的ですが、気づいていない脳の病気が隠れているかもしれませんこのように、足を引きずるのが気になる場合は、まずその原因を探す必要があります。

しかし、この原因に当たる部分が明確でない場合は適応症かどうか判断ができません。

「足の引きずりが改善する気配がなく長引いています」とか「少しずつ悪化しています」とおっしゃる場合、これは初回質問⑥「HOW」にあたる部分です。そこを深掘りして、具体的に適応症か不適応か判断できるまで詳細を聞いていくことが大切です。

【対策】

病気が原因ではないかと疑われる場合は、少しでも早く医師の診断を受け、原因を明確にするようにすすめましょう。

事故やケガが原因で足を引きずる場合

交通事故や転倒などの突発事故での怪我のときはどうでしょうか。その怪我が、骨折や捻挫の場合、後遺症で足を引きずることがあります。医師から「もう大丈夫ですよ」と言われたあとでも、なかなか足を引きずるのが治らない場合があります。

骨折はキレイに治ったのに、または捻挫が治ったのに足を引きずるときの原因は2つ考えられます。

1、足首の関節が正しい位置に戻りきっていない
2、足首を通過する腱が炎症を起こし癒着している

一つずつ説明します。

足首の関節が、正しい位置に戻りきっていない

関節(骨と骨のジョイント)はショックを吸収するようにできています。

例えば、「事故で足首に自転車がぶつかった」「走っていて足首がグキッとなった」時を考えてみましょう。急激に関節に衝撃が加わったとき、関節は衝撃によるショック(圧)を吸収したり、他の部位に逃したりします。そうすることで、その衝撃の力を分散させダメージを少なくするのです。

それでも十分ショック(圧)を分散できないとき、関節は負荷がかかって捻挫します。捻挫して衝撃のショックを吸収したわけです。それでもまだ十分ショック(圧)を吸収できないと、骨がポキリと折れます。

骨折は、捻挫しても吸収しきれなかったショック(圧)を受け止めきれない時に起こります。もちろん、事故でする骨折や捻挫の全てがこうだと言っているわけではありません。長い骨をハンマーで殴って折るように骨折することもあります。

骨折の状況については、お客様に骨折の経緯を聞くと、どのような角度で、どのように負荷がかかって骨折に至ったかが判断できます。

レントゲン検査で骨折がキレイに治ったと言われても足を引きずる場合は、骨折した周囲の関節捻挫が起こっている可能性を疑ってみましょう。

もし、骨折したのが脛骨や腓骨なら、足関節が捻挫しているかもしれません。特に足首を構成する下脛腓関節、距腿関節、距踵関節が正常に稼働できていないことが考えられます。このような可能性が考えられるなら、実際に触診の時にしっかりチェックすべき項目となります。

下脛腓関節、距腿関節、距踵関節の「位置」と「動き」が、解剖生理学的にみて正しい位置で正常に動けているか確認しましょう。

これらの関節のどれか、もしくは複数が正しい位置に戻りきっていないと、本人は動かしたつもりでも、思ったほど足が上がっていません。すると、足を引きずることになります。

【対策】

事故や怪我が原因で足を引きずる時は、整体の適応症です。
下脛腓関節、距腿関節、距踵関節の動きが正常でないことが原因と判断できたら、「検査=仮説=施術=検証」の手順を踏んで施術します。詳しくは【治療法】で説明します。

足首を通過する腱が、炎症を起こし癒着している

足関節の周囲は、下記のように腱が走っています。

  • 足関節前:前脛骨筋腱・長母趾伸筋腱・長趾伸筋腱・第3腓骨筋腱
  • 足関節後:アキレス腱
  • 内果の後:後脛骨筋腱・長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱
  • 外果の後:長腓骨筋腱・短腓骨筋腱

足を引きずるのは、これらの腱が骨折や捻挫による炎症での癒着が原因のことがあります。

足を引きずるのは、腱が骨折や捻挫による炎症での癒着が原因のことがある

前述の腱は、それぞれ名前が違う別々の腱です。名前が違う腱は行き先も違います。ただ、足首では並走しながら通過して、足の甲や足裏に向かっています。

これは、高速道路のジャンクションのようなものです。道路はジャンクションで合流しても、目的地に向かってバラバラに伸びていきます。足首で並走しても行き先が違う腱は、そのようなイメージです。

もし、これら別々の腱の何本かが癒着するとどうなるでしょうか?当然、足を動かしにくくなります。何度も言いますが、腱は行き先(足の裏や足先など)に向かって伸びています。その途中、足首の狭い関節部位を通過するとき別の腱と並走しているだけです。

もし、足関節を通過して、足の裏の第1中足骨に行く腱(長母趾屈筋腱)と第2-5中足骨に行く腱(長趾屈筋腱)が癒着したら、どうなるでしょうか?第1指を動かしたいのに、なぜか第2-5指も一緒に動いてしまいます。

例えば、第3腓骨筋は第5中足骨についているので、第5指側=足の外側をそらす(足背)ように動きます。

ではもし、距骨の骨膜と第3腓骨筋の筋膜が癒着したらどうなるでしょうか?想像したらわかりますが、本人は足を持ち上げようとしても足首を十分にそらすことができません。つまり、足を引きずる状態になるわけです。

「癒着」とは、くっつくこと。切り傷は癒着が起こるためくっついて治ります。開腹手術をしても癒着するため、傷口がくっついて治るのです。癒着は身体にとってありがたい体の仕組みです。

しかし、本来は別々に動いていた隣り合う腱が、骨折や捻挫が治る過程で癒着すると、隣り合う腱は別々に動くことができなくなります。すると、動きが鈍くなったり悪くなったりするのです。

【対策】

事故や怪我が原因で足を引きずる場合は、整体の適応症です.
下脛腓関節、距腿関節、距踵関節の動きが正常でないのが原因と判断できたら、「検査=仮説=施術=検証」の手順を踏んで施術します。詳しくは【治療法】で別途紹介しています。

加齢が原因で足を引きずる場合

足を引きずる原因が加齢のこともあります。加齢はどなたも避けて通れません。

もし、他に原因がなくて足を引きずるなら、加齢が原因のことがあるのです。この場合、日常の体の使い方に問題があることが多いです。一般的に、動かないでじっとしているときの体の使い方(=姿勢)を意識しないと、体はどんどん前に曲がってしまいます。その機序はこのような具合です。

加齢が原因で足を引きずる場合

姿勢が悪いことによって、腰が曲がる
→腰神経叢を構成する脊髄神経が圧迫される
→ヘルニア、脊椎分離症、すべり症、坐骨神経痛などの発症
→骨盤が歪み股関節に無理が来ることで、股関節が外旋・外転した状態になる
→股関節の位置が外旋・が移転したことで、膝関節に無理が来る
→無意識に膝への負担が少なくなるように歩くので、足関節に無理が来る

 

こうなると、見た目にも腰や背中が曲がるだけでなく「がに股」と言われる体型になります。

本来なら、上半身からの力線は足に向かって、股関節 → 膝関節 → 足関節 → 足裏へと直線的に落ちて行きます。

しかし、「がに股」になると力線は、膝関節でカーブしているので直線的に落ちていくことができず、外側に重心がかかります。それによって、足関節の外側に体重がかかった使い方・歩き方を余儀なくされます。

すると、足関節は外側ばかりを使うため無理がかかり、その周囲の筋肉や腱が必要以上に力を使って硬くなります。筋肉や腱が固くなると、膝から下全体の動きが鈍くなります。

このような、加齢が原因で足を引きずる場合は整体の適応症です。施術後はタイプに合わせたアドバイスをして、外体重にならないように予防することが大切です。

また、施術者が予防対策の説明を行う時は、個人によって「健康に対する考え方は2パターンある」ことを意識したほうがいいでしょう。

1、医者通いが増え、苦痛が多い老後:無関心タイプ
2、元気で好きなことができる老後:自己管理タイプ

2つのパターンにはそれぞれ共通点があります。お客様が「1、無関心タイプ」の場合は、自分の体に何かあったら医者に行けばいい、薬を飲めばいいという考えです。一方、「2、自己管理タイプ」のお客様は、自分の体に関心があり予防の大切さを認識しています。

顔の紫外線対策を例にとれば、「1、無関心タイプ」は紫外線を気にしないタイプです。顔は年齢とともにシミ・ソバカスだらけになります。「2、自己管理タイプ」は、紫外線対策をまめに行うタイプです。クリーム、傘、手袋、外出の時間帯などに気をつければ、シミ・ソバカスは相当予防できます。

体も、この例と一緒です。紫外線対策に無関心だと、顔にシミ・ソバカスができるのと同じで、健康に無関心な人は、体のあちこちに痛みや不自由さが出て初めて「あれ?どうしたのだろう、医者に診てもらおうか?薬を飲もうか?」と慌てます。

一方で、健康に関心を持ち、自己管理できている人は体も良い状態でいることができます。普段から気をつけているので、もし体に異変があればすぐに気づくことができます。そして、適切な処置をすれば回復が早いです。

そのため、1、無関心タイプと2、自己管理タイプで対処法が異なります。

【対策】:1、無関心タイプのお客様の場合

無関心タイプのお客様は、今まで自分の体に関心がなかったため、なかなか足を引きずる原因が自分の体の使い方や普段の姿勢にあったのだと理解できません。「ピンとこない」という方が正確かもしれません。

施術で体が楽になったら、次は、どのようなセルフケアで再発予防できるかを指導する必要があります。足を引きずる対策の指導をするときは、いきなり色々言っても理解できません。

そこで、以下のような流れで指導しましょう。

1. 自分の姿勢や体の使い方が悪いことに気づいてもらう
2. 理解されたら、これ以上悪くならない予防をしようと思ってもらう
3. 予防のための体の使い方や姿勢を紹介する

気づき→決意→行動→検証 このような流れで施術者が、根気よくアドバイスすることが大切です。

【対策】:2、自己管理タイプのお客様の場合

自己管理タイプのお客様は、自分の体を管理できています。自分の体は自分で守る気持ちを持っています。誰かを頼ったり、悪くなってから後手の対応をしたりすることは稀です。未然に健康を害するものを排除したい、予防したいという意思があります。

例えば

・睡眠・食事・適度な運動を意識して生活している
・友人・知人と交流を持っている
・日常の体の使い方に気をつけている
・動かないときの姿勢を意識的によくしている

といった具合です。

自己管理タイプの方は、今まで自分で体調管理されてきています。そのため、体の使い方や姿勢のアドバイスをしてください。すぐに実践される方々です。

同じように足を引きずるといっても、このように原因が違えば、予防対策のアドバイスは当然違ってきます。

まとめ

1、足を引きずる原因がわからない場合は「一度医師の診断を受けてください」と提案してください。

2、医師の診断で問題がない場合は、5W1Hで事故やけがの状況を詳しく聞きましょう。丁寧な質問をすることで、関節で捻挫が起こっていないか、腱の癒着がないかなどの検査ポイント、施術ポイントを見つけやすくなります。

3、加齢が原因で足を引きずる場合は、良くなったら再発予防のアドバイスが必要です。お客様のタイプに合わせて、理解してもらえるように説明をする必要があることを意識して検査や施術に入ることができます。

このように、足を引きずるお客様の診断では、「5W1H」の6つについて詳しく話を聞くことが大切です。詳細を聞くことで、①お客様に最適な提案ができ ②検査、施術の組み立てが明確になり ③予防対策アドバイスが的確にできるようになります。

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